Rochesterで数理政治学を学ぶ

アメリカ政治学博士課程留学サンプル

指導教官選び(改訂版)

昨年も指導教官の選び方について投稿したが、その後の経験を踏まえてより考えがまとまったと思うので、改訂版を投稿したいと思う。

以下は、指導教官をお願いする先生を選ぶ上で私が重要だと考える要素である。

①指導熱心であること

②オープンに議論ができること

③研究関心の近さ

④指導学生のPlacement

 

まず①「指導熱心である」というのは、論文のドラフトへのコメントを依頼した際に、丁寧にドラフトを読んだ上でコメントを下さるという「質」の側面と、特別忙しい事情が無い限り早めに対応して下さるという「速さ」の側面を意味する。まず「質」についてだが、他大学の先生にコメントをお願いする際には学会のDiscussantを除き丁寧にドラフトを読んでもらえる事は期待しない方がよく、したがって綿密なフィードバックを期待できるのは自分の大学の先生だけであるため、「ざっと目を通して印象を述べる」という他大学の先生に期待する対応しかして下さらないのであれば、指導教官をお願いする意義が乏しいからである。

「速さ」については、対応を先延ばしにされると研究の進捗に支障をきたすため、なるべく早く対応して下さる先生を選びたい。私の経験上「1週間後くらいにミーティングして頂けますか」と依頼すれば、繁忙期でない限りは快諾してくださるケースが多いと思う。ただし注意点としては、「対面で約束を取り付けること」である。ドラフトを添えてまずはメールでミーティングをお願いするが、メールの対応がマメでない先生も多いので、すぐに返信がない場合は直近のオフィスアワーに顔を出してお願いする。決まったオフィスアワーを設けていない先生もいるので(それはメールの返信がマメな先生だけに許される方式の気もするが、現実にはそうでない先生もいるので)、その場合はワークショップの後などに話しかければいい。メールの対応はマメでなくても指導熱心な先生もいらっしゃるので、仮にメールを無視されても気にせず対面でアプローチするメンタリティを持ちたい。ただし夏休みはオフィスアワーやワークショップがなく対面でアプローチするという手段がとれないため、夏休みに研究を進捗させる為にはメールでもアポが取れる先生を選ぶ方が良いと思う。

次に②「オープンに議論ができる」というのは、一方的に先生の意見を押し付けてくるのではなく、きちんとこちらの意見も聴いて下さったうえで双方向的なやりとりが可能である事を意味する。自らの研究の責任は自分にあるため、仮に指導教官と意見が食い違ったとしても、最後は自分の考えを信じねばならない。したがってきちんと納得しない限りは先生の意見を研究に反映する事は出来ないので、先生の意見に対して反対意見を述べねばならない局面も出てくる。その際こちらの意見を踏まえて納得できる理由を言って下さらずただ助言に従うよう求めてくるのであれば、学生の学びには繋がらないだろう。初学者である学部生ならまだしも、大学院生はあと数年で自立した研究者にならねばならないので、盲目的に先生に従うべきではない。一方通行の指導ではなく、双方向的な議論ができる先生に教わるのが、自らの成長にとって重要な事だと思う。

③「研究関心の近さ」は改めて言うまでもないと思うが、研究関心が近い先生ほど精度の高いフィードバックが期待できるため、関心の近い先生を選ぶのは当然ながら重要である。

④「指導学生のPlacement」については、良い研究者になれるかは結局自分次第というのは勿論なのだが、就職に成功した指導学生が何人もいる先生と全くいない先生とでは、期待値として自分の就職の成功率が高いのはやはり前者なので、指導学生のPlacementが良い先生に教わるに越した事はないと思う。

まずは研究関心が近い先生全員にアプローチしてみて、上記の全てを考慮しながらDissertation Committeeのメンバーや2nd-year paperで教わる先生を考えればいいと思うが、その中で正指導教官を決める際には、特に①②の2点を重視すべきではないだろうか。というのも、①については、正指導教官は最も頻繁にやり取りをする先生なので、きちんと対応して下さらない方が正指導教官だと大変な苦労を強いられる事になるし、②については、正指導教官がOKを出す事が大学に論文を認めてもらう上で重要なので、副指導教官と意見が食い違っても正指導教官との合意形成さえできていれば論文を完成させる事は可能だと思うが、その逆は難しいと考えられるからである。正指導教官選びにおいて③④も二次的には重要だと思うが、①②の方が優先度は高いと思う。

私はもうすぐ2nd-year paperの指導教官(正副1人ずつ)を決めねばならない時期に差し掛かっており、これらを踏まえて後悔の無い決断をしたい。

後日談:無事に指導教官をお願いする先生を2人に絞り込むことができ、①②の観点からはどちらも素晴らしい先生なのでどちらを正指導教官にすべきか悩ましかったのだが、一人はシニアの先生、もう一人は若手の先生で、若手の先生から「正指導教官はシニアの先生が良いよ」とアドバイスを頂いたので、それに従う事にした。その意図としては、若手の先生は副指導教官であっても熱心に指導して下さる先生が多いのに対し、シニアの先生は正指導教官か副指導教官かで指導への熱が変わる傾向があるため、教わりたいシニアの先生がいる場合は正指導教官として教わる方が良いから、という事のようである。