Rochesterで数理政治学を学ぶ

アメリカ政治学博士課程留学サンプル

MPSA初採択

Midwest Political Science Association(MPSA)という、AJPSの発行元でありAPSAに次いでアメリカで2番目に大きな政治学会に論文(単著)が初採択された。これまで日本でも学会報告の経験はなかったので、今回が初学会報告という事になる。つい2か月前の投稿で「そこまで焦って大きな学会に参加を始めずともよいのではないかと思う」と言っていたにもかかわらず白々しくMPSAに応募したのには、3つ理由がある。

まずきっかけとなったのは、とある先生からその研究の意義を全面的に否定されたという出来事である。しかしそこで述べられた理由は私にとって同意できないものであり、既に他の先生2人から好意的なフィードバックを頂けていた事もあって、「それなら外部の人にも意見を聞いてみたい」と考え、これがMPSA応募を検討する最初のきっかけとなった。MPSAやAPSAの応募では論文本体ではなくAbstractをProposalという形で提出し、学会直近の期日までに論文本体を提出するという流れなのだが、もし研究の細部ではなく研究それ自体が取るに足らないものなのであれば、AbstractもRejectされて然るべきである。だがAbstractがAcceptされたという事は、少なくとも研究自体に関しては、数理政治学セクションのChairであるPrincetonのGerman Gieczewski先生に面白そうだと思ってもらう事ができた事を意味する。冒頭の先生のコメントを受けてこの研究を継続すべきか、この研究はお蔵入りにして新しい研究を始めるべきか悩んでいたが(とはいうものの9割方続ける気でいたが)、この研究を完成させるべきだという確信を得る事ができた。

次に、この研究を春までに完成させるというコミットメントをしたかったという理由がある。この研究は実は2nd-year paperであり、本来の締切は来年の夏休み終了時なのだが、さらにその翌年春に締切を控える3rd-year paperに次の夏休みから早めに取り組み始めたいため、2nd-year paperは今年度の春学期終了時までに完成させようとかねてから計画していた。加えて、3rd-year paperに意識が移りこの研究への熱が冷めてしまわないうちに早くジャーナル投稿にこぎつけたいと考えており、来年夏休みにはジャーナル投稿を始めたいと考えた時、4月に開催されるMPSAは完成目標としてベストタイミングであった。

最後に、この研究を学会で報告するチャンスは次のMPSAが最初で最後だろうと思っていたという理由がある。というのも、次々回のMPSAとAPSAは3rd-year paperで応募したいと考えているので、次回のMPSAとAPSAがこの研究を報告する数少ないチャンスなのだが、先輩たちを見ているとMPSAよりもAPSAの方が高学年になってから採択されている傾向があり、現在の自分の実力で狙うのであればMPSAの方が現実的だと感じていたからである。またレベルだけでなく相性についても、APSAよりもMPSAの方が数理政治学セッションの過去のパネルが自分の研究関心にフィットしており、近い研究関心を持つ研究者と交流するチャンスとしてMPSAの方がより魅力的に映っていた。したがって、次回のMPSAがレベル・相性の両面で本命だった。

2か月前の投稿では、学会は就活の側面が大きいため2年生のうちから焦って参加を始める必要はないと考えていたのだが、このように①自分の大学の先生との間で意見が割れた時に外部の人の意見を聞いてみたいという理由、②自分が理想とする完成時期へのコミットメントデバイス、③その後の研究との兼ね合いで直近の学会がその研究を報告できる数少ない機会、といった様々な要素を勘案して今回は報告するメリットが大きいという結論に至り、応募を決めた。とはいえ本当にAcceptされるとはあまり思っていなかったので嬉しい気持ちがある反面、まだ十分な実力が無い段階でJob Marketに片足を踏み入れてしまう事への怖さもある。今回のMPSA応募が成功だったかという最終的な総括は、学会報告を経てまた4月に行いたいと思う。