Rochesterで数理政治学を学ぶ

アメリカ政治学博士課程留学サンプル

ミーティング記録④ Professor Avidit Acharya

今週のPolitical Economy Seminarの講演者であるAvidit Acharya教授はStanfordの数理政治学者で、かつてロチェスターでも教鞭をとられていた方である。講演内容は「選挙キャンペーンの予算を2人の候補者が戦略的に消費した時、最適な消費スケジュールはどのようなものか」という論文についてだった。一見非常に複雑なDynamic gameだが、いくつかの仮定の下でこの問題はキャンペーン開始時のStaticな最適化問題に単純化(つまりDynamic→Static、Game theory→Decision theoryと二重に単純化)する事ができ、その下で出される答えは「各候補者の残り予算に対する消費の比率が毎期候補者間で同じになるように消費していく」というものである。選挙研究で言う中位投票者への収束のような対称性のある解であり、答え自体は直観的に納得のいくものである。ただ複雑な問いをあまりにも単純化する事に成功しているので、それらの仮定がどれだけ制約的なものでないかがこの論文の評価の分かれ目だと思われるが、実はこの論文は既にJournal of the European Economic Associationというトップジャーナルにアクセプトされているので、素晴らしい論文なのだと思う。

プレゼンは非常に早口かつ質問も正確に即答していたので、とても頭の回転の速い方だと感じた。聴いている側は相当な集中力を要するため後半になるにつれて質問が減っていったが…。学会で行う短時間のプレゼンなら早口もいいが、1時間以上行うセミナーでのプレゼンは聴き手の集中力がもたないので速度は抑え、かといってゆっくり過ぎて子守唄のようになっても聴き手が寝てしまうので、絶妙なスピードでのプレゼンが重要だと感じた。ちなみに自分は「何か絶対に質問しよう」と前のめりに話を聞いていたので、最後に2つ質問する事ができた。以前の投稿で立てた「セミナーに興味があり参加すると決めた以上は、事前に論文に目を通した上で参加しなるべく質問もする」という方針を実行する事ができたので、その点は一歩前進である。

セミナー後にはミーティングをさせて頂いた。今回の先生は事前に論文に目を通せなかったという事で口頭で論文の要旨を説明したが、すぐに内容を理解し「そのアイディアは良いと思う」と言ってくださった上で、参照すべき関連文献を一つ教えてくれた。頭の回転が速すぎて表情もあまり変化せず考えている事が読めないというタイプの方だったので、その好反応をどれくらい本気にしていいのかは分からないが、セミナー中ベテラン教授の質問にも切り捨てるような口調で即答していた所を見るとあまり忖度はしないタイプでもある気がしたので、一応額面通り受け取らせて頂きたい。自分も先生のペースに乗せられて早口だったので10分程度と非常に短時間だったが、緊張感あるミーティングだった。数理政治学者が多くセミナーに訪れるロチェスターという環境を最大限活用するため、たとえ毎回のミーティングから得られる情報自体はそれほど多くなくても(もちろん指導学生でもない相手にわずかでも時間を割いてくださる事に感謝しつつ)、こうしたミーティングを地道に続けていきたいと思う。