Rochesterで数理政治学を学ぶ

アメリカ政治学博士課程留学サンプル

ミーティング記録③ Professor Ian Turner

Ian Turner先生はFormal TheoryとAmerican Politicsを専攻するYaleの助教授で、主に官僚制とMoney Politicsの研究をしている方である。Turner先生は自分と近い研究関心を持つ研究者のお一人で何本も論文を読んだ事もあったので、VisitorとしてRochesterに1週間滞在するという情報を聞きつけ、ここぞとばかりにミーティングを申し込んだ。

うちの学部は、Visitorが滞在中に教授たちとのディナーとランチ、大学院生との朝食の機会を設けるのが恒例である。今回私は初めて朝食に申し込んだのだが、非常に良い時間を過ごす事ができた。朝食はVisitorと3人の大学院生とで行われるので、1対1ミーティングよりも一生懸命話さなければならないというプレッシャーが弱く、そこまで入念に準備していかずとも自然と会話を楽しむ事ができた。今回参加した大学院生の中では圧倒的に自分が近い研究関心を持っていたため、1時間半(あっという間に過ぎた!)の朝食中大半は先生か自分が喋っている時間だったが、だからといってもし2人だけで話していたら、ここまで話は盛り上がらなかったと思う。数人の会話という弱いプレッシャーのなか自発的に発言するのと、1対1の会話という強いプレッシャーのなか半ば強制的に発言するのとでは、話している量は大差なくとも精神的余裕が全く異なる。数人の会話の方が他の人の話を咀嚼してから発言する余裕があるので、かえって深い話ができるような気がした。今後も研究関心の近い先生との朝食の機会には、積極的に申し込んでいこうと思う。

その翌日1対1ミーティングに臨んだのだが、前日に既に面識を持っていたのは大きかった。初対面での1対1ミーティングはほとんど面接のようなもので極度の緊張が伴うが、リラックスした雰囲気で1度話しているぶん、あまり緊張せずにミーティングを楽しむことができた。会食→ミーティングというのはこれから鉄板の流れになると思う。

ミーティングの内容については、自分の研究に事前にざっと目を通して頂いた上で追加的に参照すべき文献を紹介してもらい、それらとの違いをより強調するようにというコメントを頂いたのと、以前読んで強い関心を持っていた先生の研究に関して質問(それに近いアプローチの研究を自分でもやろうと考えているため重要な質問)をする事ができた。以前の投稿がモチベーションとなって自分の中で恒例にしようとしている「良い数理政治学の論文とはどのような論文だと思いますか」という質問もミーティングの最後にしたが、これには「問いに答えるのに必要な中で最もシンプルなモデルを作る事で、どの要素が重要かを明らかにしている論文」という回答が返ってきた。これには完全に同意なのだが、一方で単純すぎるように「見える」論文はあまり評価されない傾向も感じているというジレンマを伝えてみた所、「経験上無意味にモデルを難しくする事を要求してくる査読者は少なく、意味のあるExtensionを提案してくれる事が多い」との事だった。これは本当なら非常に嬉しい知らせで、自分としてはなるべくシンプルなモデルを追究するという方針を変える事無く、有意義なExtensionを行う事で「難しい研究に取り組んでいるように見せる」という非本質的な(しかし数理政治学者として高いスキルを持っているという事を見せるためには就活上無視できないであろう)要求にも答える事ができる。現在アクティブに研究しており研究関心も近い先生の経験談なので、信頼できるアドバイスだった。

朝食・ミーティングの総括としては、「ネットワーキング」というと何を話せば良いか分からないし内向的な自分は苦手意識があったのだが、今回のように研究関心が近い方が相手であれば、自分が興味のある話をしていればいいので何を話せばいいか困る事はないし、気負わずに楽しめる事が分かった。研究関心がそれほど近くない相手とそれなりに盛り上がる話をできるようになるのも、就活でのFly-outの事などを考えると重要な事だと思うが、中身の薄い話をした所で印象には残らないので、強い印象を残し次に会った時に認識してもらえている相手を増やすというネットワーキングの目的からすると、研究関心が近く深い話ができる相手との人脈を構築していく事の方がより重要だと思う。そのためまずは研究関心の近い方を相手に成功体験を積み重ねる事でネットワーキングへの苦手意識を払拭した後、可能な限り少しずつそれ以外の人とも会話を楽しめるようにしていきたいと思う。

今回の朝食・ミーティングが成功したのは先生と研究関心が近かったのも重要だが、先生の人柄がとても良かったのにも助けられた。予定上少ししか聴く事ができなかったが講演でのプレゼンも非常に上手だった(スライドは文字で埋めすぎず適度な余白があり、数式にも色を用いるなど見やすかった・話し方も早口すぎず抑揚もあり聴きやすかった)ので、Turner先生はロールモデルの一人になった。次にお会いした時に自分を認識してもらえるほど印象を残せていたのなら、今回のネットワーキングは本当の意味で成功した事になる。