Rochesterで数理政治学を学ぶ

アメリカ政治学博士課程留学サンプル

初MPSA

今回は初めてMPSAに参加した感想を書きたいと思う。MPSA中の時間の過ごし方は大きく3つ(数理政治学セクションへの参加、ネットワーキング、シカゴ観光)である。 数理政治学セクション 開催地であるPalmer House a Holton Hotelの第一印象は、「スクリーン…

指導教官選び(改訂版)

昨年も指導教官の選び方について投稿したが、その後の経験を踏まえてより考えがまとまったと思うので、改訂版を投稿したいと思う。 以下は、指導教官をお願いする先生を選ぶ上で私が重要だと考える要素である。 ①指導熱心であること ②オープンに議論ができる…

リベラルな聴講か履修か

今期は数理政治学・ミクロ経済学・経済数学の授業を受けている。数理政治学は履修、ミクロ経済学・経済数学は聴講にしたのだが、「履修にするか聴講にするか」という問題は結構悩ましい問題だと思う。もちろん必要最低単位は取らなければならないので、それ…

ミーティング記録④ Professor Avidit Acharya

今週のPolitical Economy Seminarの講演者であるAvidit Acharya教授はStanfordの数理政治学者で、かつてロチェスターでも教鞭をとられていた方である。講演内容は「選挙キャンペーンの予算を2人の候補者が戦略的に消費した時、最適な消費スケジュールはどの…

2023年秋学期振り返り

Introduction to Mathematical Economics 前半はCarothers (2000) Real AnalysisのPart1を教科書としてOpen/Closed Sets, Continuous Functions, Connectedness, Completeness, Compactnessといった位相数学の概念を学び、後半はConvexity/Separating Hyperp…

MPSA初採択

Midwest Political Science Association(MPSA)という、AJPSの発行元でありAPSAに次いでアメリカで2番目に大きな政治学会に論文(単著)が初採択された。これまで日本でも学会報告の経験はなかったので、今回が初学会報告という事になる。つい2か月前の投稿で…

ミーティング記録③ Professor Ian Turner

Ian Turner先生はFormal TheoryとAmerican Politicsを専攻するYaleの助教授で、主に官僚制とMoney Politicsの研究をしている方である。Turner先生は自分と近い研究関心を持つ研究者のお一人で何本も論文を読んだ事もあったので、VisitorとしてRochesterに1…

数理政治学ランキング/数理政治学を勉強できる大学院

博士課程 分野における大学の強さはPlacementで測られる事が多く、Placementを反映した代理指標として、ランキングが参照される事が多い。だが数理政治学にはランキングが存在しないため、自らPlacementを調べてランキングを作成する事にした。選出基準は「…

Wallis Institute of Political Economy Annual Conference 2023

今年もその季節がやってきた。2度目のWallis Conferenceである。(スケジュールや報告内容にご関心がある方はこちらをご覧いただきたい。)今年は課題で立て込んでいる事もあって部分参加する事にしたのだが、これはたとえ忙しくないとしても一般に良い戦略…

始業式代わりのポスターセッション

大学院は学部に比べて学生が少なく、ロチェスター大学政治学部のように小さなプログラムともなれば、教員も大学院生も各30人程度という小さなコミュニティになる(クラスで言えば2クラスくらい)。これだけ小さなコミュニティなのに、一切見た事も話した…

テニスと卓球との間には

先ほどの投稿は真面目で暗い内容だったが、この投稿は一転して不真面目で明るい内容である。私は今日、政治学部の同期に誘われてPickleballというアメリカ発のスポーツを初めてプレーする事になった。Pickleballは、テニスコートより小さめのフィールドで卓…

2023年夏学期振り返り

大学の講義が無い夏の期間というのは「夏休み」という呼び方が一般的だと思うが、研究者にとっては(今はまだ受ける方だが将来的には教える方でも)講義の無い夏が最も研究を捗らせるべきシーズンであり、休みという呼称は休んでもよいという印象を自分自身…

新しいオフィスへの移住失敗

今回の投稿はいつもより短い。Instagramを見るように気軽な気持ちで眺めて頂ければ幸いである。今日は新しいオフィスが使える日なのだが、残念ながら私のオフィスはまだ使えないようである。代わりにしばらくこの部屋を使うようにと事務の方から言われた部屋…

海外大学院留学説明会への登壇

米国大学院学生会さんという団体から、今週末に行われる海外大学院留学説明会への登壇のお話を頂いた。この説明会は日本人大学生の海外大学院への進学を大きく後押している10年強の歴史がある説明会で、自分も学部生の時から何度もオーディエンスとして参…

Divide-the-Dollar ModelとSpatial Model

今回の投稿はいつもより専門的なので、ほとんど誰も読まない事を覚悟して投稿したいと思う(誰も読まないのはいつもの事ではないかというツッコミは妥当だが野暮である)。だがこの話は数理政治学を勉強している人なら必ず一度は抱く疑問だと思うので、若干…

Comparative Politics and Formal Theory Conference

Comparative Politics and Formal Theory Conferenceという、中々にニッチな学会に参加してきた。ニッチと言うのは、以前の投稿でも書いたように比較政治学と言えば実証研究中心の分野で、「比較政治学は実証研究である」と明示的に述べる大学もあるくらいだ…

2023年春学期振り返り

今期もApplied Theory、Pure Theory、サブスタンス、計量とバランスよく4科目を履修した。 Voting and Elections 選挙のモデルを体系的に学習するApplied Theory科目。一般に、決定版と言えるような教科書があるほど成熟した分野は教科書を通じて体系的に学…

「Formal Theory=方法論」という誤解

「Formal Theory=方法論」というのはよくある誤解だが、この根源にはアメリカ政治学と比較政治学(アメリカ以外の政治)を区別するというアメリカの政治学の特徴が関係していると思う。その理由を説明するために、少し遠回りしてFormal Theoryという分野を取…

応用理論とは何か

現在は実証研究中心の時代と評される事が多い。だが経済学においては理論研究中心の時代を経て、現在は実証研究がキャッチアップしている時代と考えれば、長い目で見ればこれは必ずしもアンバランスなトレンドとは言えないと思う。一方、体系的な理論をさほ…

ミーティング記録② 鎌田雄一郎先生

このブログは主に留学中に記録に残しておきたい事を投稿しているのだが、授業やカンファレンスに加えて1対1のミーティングの記録も残しておこうと思う。 前回の投稿からわずか1週間で2回目の投稿をするとは思っていなかったが、今回は本当に初対面である…

恩師との初対面 (Professor Scott Gehlbach)

「恩師との初対面」とは何事だと思われたと思うので訳を説明すると、今日お会いしたのは私がシカゴの修士課程でお世話になった先生で、パンデミック中のためオンラインのまま修士課程を終えた私はZoomやメールでしかやり取りした事がなく、直接お会いしたの…

留学お役立ち情報②リーディングの戦略

計量・数理政治学者であれば読む文献は英語が主となるため、効率的に英語を読む戦略を見つける事は重要である。また交換留学や大学院留学においてもリーディングをする時間はかなりのウェイトを占めるから、リーディングにうまく対処する事が留学の充実を決…

留学お役立ち情報①英語漬けをやった方がいい場合・やらない方がいい場合

私はこれまで学部交換留学、修士課程留学、博士課程留学と3度に渡って留学をしており、なおかつ交換留学ではひたすらリーディングとレポート執筆を繰り返す文系的な留学を、修士留学では逆にProblem Setと試験が中心の理系的な留学を経験した。したがって、…

2022年秋学期振り返り

ロチェスター大学政治学部では14科目の履修が必要であり、最初の1年は各学期4科目ずつ履修して授業に集中、2年目と3年目はそれぞれの年度終わりに提出する2nd-Year Paper・3rd-Year Paperに向けて授業と並行して研究も行い、4年目以降はPhD Candidate…

Rochesterの講義群:国内政治の数理

国内政治の数理を学ぶ者にとってScott GehlbachのFormal Models of Domestic Politicsはバイブル的存在だろう。この本は国内政治のモデルをほぼ網羅する内容となっており、第2版では1~7章で民主主義、8章で権威主義、9章で体制転換のモデルを紹介している*1…

Rochesterで初「散髪」

これまで硬い内容の投稿ばかりが続いたので、今回は初めてロチェスターの生活について書きたいと思う。 新しい国での生活において、散髪をどうするかというのは不安材料ランキングのベスト3には入るだろう。国によってスタイルも違うし、周囲の人達を見ても…

Wallis Institute of Political Economy Annual Conference 2022

Wallis Insitute of Political Economyというのはロチェスター大学の政治学部・経済学部が共同で運営する政治経済学(≒数理政治学)の研究機関で、主な仕事の一つとして年に一度Annual Conferenceを開いている。PhDの学生も参加できるという事で何やらよく分か…

自己紹介(ロングバージョン)

これまでの投稿は、アメリカ政治学博士課程受験における情報の少なさに対する危機感から、政治学専攻の学生が少しでも留学しやすくなればとの思いで執筆してきた。したがってこれらの投稿はやがて多くの方の目に触れる事を期待して、役立ちそうな情報に絞っ…

数理政治学の勉強法

以下で定番の教科書を挙げている。学部レベルは主に日本語文献を挙げており、大学院レベルでは英語文献を挙げている。これは、慣れない分野はまず日本語で勉強した方が頭に入って来やすいが、基本を日本語で理解していれば発展的内容を英語で学ぶのもスムー…

アメリカ・イギリス政治学修士課程受験ガイド

どのような修士課程に行くべきか 博士課程についての総論で述べたように、博士課程を見据えて修士課程に行く場合は計量・数理の手法を中心に学習する事がお勧めである。博士課程で計量政治学を専攻したい場合、政治学修士よりも計量社会科学修士(例:Chicago…