今年で5度目のWallis Conferenceである。通常、同様の小規模学会はプレゼンターとDiscussantにしか渡航費が支給されないが、この学会は参加者全員に渡航費が支給されるという太っ腹な学会である。大学予算が減少する中でもあえてそのスタイルを貫くほど、ロチェスターを象徴するイベントだという事だろう。なお、プレゼンター・Discussant・卒業生以外の招待者がどのように決まっているかは謎である。毎年来ている先生もいるし(毎年同じ席に座りがちなので分かる)、新しい先生もいる。参加者のマジョリティは経済学者なのだが、ロチェスター政治学部の先生達の個人的なネットワークに基づくとすると奇妙な話である。ちなみに卒業生についてはトップスクールのテニュア(トラック)教員ばかりなので、将来この学会に呼ばれる事が目標である。
さすがに5度目となるとブログに書くネタが無くなりそうなものだが(実際3回目と4回目は書いていない)、今回は今までとは違うスタンスになったので書いてみる事にする。すなわち、「学会の主目的はネットワーキング」という事は今まで散々先生・先輩諸氏から言われて知っていたものの、ようやく自分もそのフェイズに入ったように感じる。これまでのWallis Conferenceと言えば、誰も知り合いがいないのでボッチ飯を食べながら報告論文の予習をするというのが恒例の過ごし方だったが、今回はランチタイムや休憩時間に積極的に人と話せるようになった。なぜそのような変化が起きたかというと、過去の学会を通じて知り合いが増えたからである。初対面の人に話しかけるのは非常にハードルが高いが、知り合いに話しかけるのはハードルが低い。あわよくば同席しているその人の知り合いを紹介してもらえたりして、無理ない形で少しずつネットワークを広げる事ができる。そうした好循環が生まれ始めるフェイズに、自分もようやく突入できた実感があった。
では最初に知り合いを作るにはどうすればいいのかという話が問題だが、これは大きく①先生の紹介、②過去のビジター、③学会のDiscussant、④学会での質問、⑤学会での1対1ミーティングという作戦があると思う。
①先生の紹介:外部の学会では指導教員が出席しておらず独力でのネットワーキングをせざるを得ない事も多いが、Wallis Conferenceのように自分の大学で開催される学会の良い所は、指導教員がその場に確実にいることである。今回自分は、指導教員の元教え子で自分との研究関心が最も近い人とお話することができた。指導教員とその方が話されている付近で不自然に立ち止まっていたところ、無事に先生が気づいて紹介してくださったのだが、直後に先生が退席してしまい、慌ててジョブマーケットペーパーの要約を話したり、パッと思いつく質問をいくつかしたりした。お二人が話している所に混じろうと呑気に考えており心の準備が不十分だったため、何を話せばいいか分からず沈黙が10秒くらい続いてしまう(実際は5秒だったかもしれないがそのくらい長く感じた)事が何度かあった。就活本番でこのような事が無いよう、とっさに誰相手にでも聞ける(それでいて変に思われない)質問をもっと用意せねばなるまいと思った。
②過去のビジター:数理政治学者がワークショップでロチェスターを訪れた時、自分は必ず朝食や1対1ミーティングに申し込む事にしている。(朝食は毎回、1対1ミーティングは一定程度関心が近い場合。)ざっとカレンダーを見たところ、今まで18人のビジターと話していたようである。数理政治学という分野の狭さを考えると、全数理政治学者の数%とは既に知り合いと言っても過言ではないだろう。(経済学者を除き政治学者だけに限定すれば、10%を超えていてもおかしくはない。)この中で唯一低学年からでも始められるネットワーキングの手段なので、コツコツ頑張ってきて良かったと思う。
③学会のDiscussant:学会のDiscussantでお世話になった方は、自分の論文を読んでくれた事があるためビジター以上に自分を覚えてくれている可能性が高い。しかもDiscussantに割り当てられるくらい関心も近いので、5つの手段の中でも最も重要なルートだと思う。外部の学会に参加するのは時間的・体力的に(時には金銭的にも)中々大変だが、最も強いネットワークがそこから始まると考えれば報われるものである。学会についてのアドバイスで「とにかく行く事が重要なので倍率が低そうなセクションに応募しろ」と聞いた事もあるが、私は個人的に反対である。自分がネットワーキングをしたいと思う人達が集まるセクションのDiscussantと知り合う事が、学会に参加する最大の意義だと思うからである。
④学会での質問:学会で知り合いを作るもう一つの手段は、報告者に質問する事である。以前にも書いたように、APSAのような大規模学会では未完成論文が報告される事も多く予習は困難、報告時間も短いので短時間で内容を理解するのは困難、という良い質問をするのが困難を極めるシチュエーションではあるが、その中でも何か良い質問を捻り出す事ができれば、報告者とのネットワーキングが可能である。実際自分は、昨年のAPSAで話しかけその後メールのやり取りもした方と継続的関係を築く事ができ、今回の学会でも話す事ができた。Wallis Conferenceのような小規模学会では完成論文が多く予習が可能、報告時間が長く理解もしやすいという点で、よりチャンスが大きい。ただ今回は自分の関心に近い論文が1本しかなく、それを通読して臨んだものの経済学者のテクニカルな論文(無限期間のゲームで、論文の性質上短い期間のトイモデルで直観を与えられたりもしていない)なため良い質問を思いつく事ができなかった。関心の近い指導教員の一人が質問しているのを聞いて、なるほどと思った。こういうテクニカルな論文に対しても良い質問が思い浮かぶようになると、自分も一人前になれたと言えると思う。
⑤学会での1対1ミーティング:これは就活本番で実行しようと思いまだ実践できていないのだが、就活中の学会と言えば1対1ミーティングの嵐である。書類選考に通りやすくするため、書類選考に先んじて自ら1次面接を申し込んでいく作戦と言える。
以上の手段を駆使して少しずつ知り合いが増えたことで、「数理政治学の学会であれば少なくとも1人はその場に知り合いがいて、まずはその人に話しかける事からきっかけを掴める」という状態が形成できた。まだまだネットワーキングは初期段階だが、就活本番に向け順調な滑り出しだと言えると思う。


