恐らく全書類の中で一番困るのがSOP(志望動機書)だろう。だがシカゴ大学いわく実は書くべき内容は大体決まっていて、①研究関心、②過去のトレーニング、③その大学との相性、の3つである*1。語数指定を行っている大学もあるが、自由な場合は1000word程度で書くのが標準的である。(letter size/12 point/行間1.15で2ページ書くと丁度そのくらいになる。)最初に簡単に自己紹介をした後、
例:I am applying for the Ph.D. program in political science at the University of …in order to prepare myself to be a professor in (Subfield). This year I earned an M.A. in …at the University of….
①と②に1ページ弱ずつ費やし、最後の一段落を③に使うというのが目安である。
①でのポイントは、良い問いを立てられている事だろう。「良い問い」というのは、新規性と重要性を兼ね備えた問いである。ニッチなテーマを選べば新規性は確保しやすいが、その問いがなぜ政治学にとって重要なのかを説明しなければならない。逆に多くの政治学者が既に取り組んでいる問いの重要性はそれほど説明を要しないが、新規性を見出すのに苦労する。こうしたジレンマの中で新規性と重要性の双方を兼ね備えた問いを見つけ出す能力が研究者として最も重要な能力の一つであり、SOPで測られているものである。「SOPが重要」というのはどの分野の入試でも言われる事だが、こうした点を考えればそれも頷けるだろう。
もう1つのポイントは、現在の短期的・具体的な関心だけでなく、長期的・一般的な関心も述べる必要があるという事である。なぜなら、短期的関心は変化しうるし審査側もそれを想定しているため、変化しづらい長期的な関心と、なぜそれを追究したいのかというモチベーションが、大学との相性を測るという観点ではより重要であるからである。順番としては、長期的関心→モチベーション→短期的関心→それを踏まえて執筆した論文の説明、と繋げるとうまく②と接続できると思う。
②ではまず、Writing Sampleとして提出した論文の要約とそこでの貢献をまとめる。貢献というのは、先行研究と自分の研究のどこが違い(新規性)、なぜその違いが重要なのか(重要性)という点を説明すればよい。そして次に、方法論の授業の履修状況を書く。具体的な科目名や成績は成績表に書いてあるので、ここでは方法論のバックグラウンドが強いというシグナルを発する目的で、簡潔に書けばよい。
①②については全ての大学に共通した内容でよい。むしろそれが望ましいと言える。というのも、自分が本当にやりたい研究に適した環境に行くべきであり、合格するために研究関心を偽っても、ミスマッチな大学に行って困るのは自分だからである。
③では、志望大学で最も関心が近い3人の先生の名前を挙げ、その先生の研究と自分の研究関心がどのようにマッチしているかを簡潔に説明する。簡潔に書く事が重要なのは、ミシガン大学政治学部による以下の説明を見れば分かる。
Although you are welcome to reference faculty members with whom you share research interests, we strongly discourage you from giving superficial reviews of their work.
3人挙げる必要があるのは、アメリカでは3人以上の先生によりDissertation Committee 博論審査委員会が組まれるため、少なくとも3人は研究関心が近い先生が必要だからである。ここで研究関心の近くない先生を誤って挙げてしまうと、その大学との相性が良くないというシグナルを発してしまう事になる。逆に志望校を選ぶ上では、ここで自信を持って3人の名前が挙げられる大学を選びたい。ただし、メジャーな研究関心を持っている人であればそうした大学は沢山見つかるものの、マイナーな研究関心を持っている人(それ自体は悪い事ではない)は3人挙げられる大学が限られるかもしれない。その場合でも、少なくとも3人中2人は研究関心が近い人を挙げられる大学に出願したい。
後は推薦状を書いてくださる先生方に見せてコメントをもらい、できるだけバージョンアップを図ろう。英語のチェックについては、網羅的に調べたわけではないがCambridge Proofreadingはコスパが良いサービスだと感じた。