GPA・GRE
スコア類については、各大学のポリシーによって違いはあれど「足切り的に使われる」(つまり各大学が設定している最低ラインをクリアしさえすれば、後は他の書類の方が重要である)というのが、よく言われる事である。ではどれくらいが足切りラインになるかという事だが、例えば
―Stanford(1位)
Admitted students typically have very high GRE scores (approximately 166+ verbal, 163+ quantitative, and a score of 5.5 in the Analytical section). Admitted students typically have a GPA of at least 3.8 in their previous studies.
―Princeton(2位)
In recent years, admitted students have typically had 160 or above on the quantitative and verbal sections of the GRE. For those students with numerical grade-point averages, admitted students have typically had an overall GPA of 3.8 or above.
―UC San Diego(8位)
GPA GRE (Average)
Verbal Quantitative Writing
2016 3.94 166 163 5
2017 3.67 164 163 4.7
2018 3.65 164 164 4.9
2019 3.82 165 164 5
2020 3.69 164 163 4.9
2021 3.84
―Chicago(10位)
The average undergraduate GPA is 3.8 (on a 4.0 point scale).
とホームページで説明されている。したがって、Top10を目指すのであればGPAは3.8/4.0以上が目標である。GREのVerbalについては、非ネイティブにとって165点というのはかなり難しいので、Verbal+Quantitativeで計330点を目標とすればよいだろう。恐らく日本人にとってはVerbalで160、Quantitativeで170というのが最も現実的である。GREのWritingで5.0以上というのも非ネイティブには酷な要求であり、私はシカゴ大学で社会科学のPhD受験をサポートしている部門から「4.0あれば足切りにかかる事はない」と言われたので、それを信用する事にした。帰国子女でない日本人でも4.5をとれる人は時々いるようなので、4.5を目標とすればよいだろう。
もう少しランキングを下ると、
―Emory(19位)
The average combined verbal and quantitative GRE score for students entering the program is around 320.
という大学もある。したがってTop20であれば、GREはVerbal+Quantitativeで計320点を目標とすればよいと推測できる。GPAについては、ややキリは悪いが「Top15に行きたければ3.7/4.0以上」とシカゴ大学からは言われた。もしこれを下回ってしまっている場合は、修士課程(できれば留学)でGPAを更新してから出願した方が良い。
まとめれば、Top10ならGPA は3.8/4.0、GREはVerbal 160、Quantitative 170、Writing 4.5が目標、Top20ならGPA は3.7/4.0、GREはVerbal 155、Quantitative 165、Writing 4.0が目標になるだろう。GREのVerbalとWritingはネイティブレベルの語彙力がないと満点は取れないと考えられるが、計量・数理政治学を研究する上でそこまでの語彙力は必要ないため、満点を目指すのはあまり効率的ではないだろう。上記の目標点を参考に、コスパ良く切り抜けたい。
TOEFL/IELTS
TOEFL/IELTSについては、それぞれ100/7.0以上を明確に足切りとしている場合が多い。上記のGPA、GREの目標スコアはあくまで目安であり、それを下回ってしまっても合格可能性はあるが、TOEFL/IELTSについては確実にこれを超えなければならない。ただTOEFL 100、IELTS 7.0は理系でも見られる足切り水準であり、この英語力で文系が大学院で勉強できるかというと厳しい。政治学(と恐らく社会学)は文系と理系の間にある分野であり、英語を使ったリーディング・議論・レポートという文系的な学習と、数学を使った講義・問題演習・試験という理系的な学習が組み合わさった学習が必要である。したがって語学力が武器である人文科学の人達ほどには英語ができずとも仕方ないが(アメリカ留学している文学専攻の方いわく、トップスクールに行くならTOEFL/IELTSは満点近くとれて当然らしい)、逆に理系や経済学といった数学力が武器である人達よりは高い英語力を持ってないといけない。したがって目標としてはTOEFL 110/IELTS 8.0くらいが妥当だと思う。後に書くように私自身はこの目標を達成できなかったので偉そうな事は言えないが、私の知り合いを見ている限り、海外経験なしでもTOEFL 100/IELTS 7.0はとれる人が多く(自分も交換留学に行く前の大学2年時点で101点だった)、1年の留学を経てTOEFL 105~110、IETLS 7.5~8.0が相場のように感じるので、十分現実的な目標だと考えられる。
少し脱線して英語学習について述べると、私は「楽しくやる事で継続する事」と「自分に合ったレベルの教材を使う事」がポイントだと考えている。語学は毎日少しずつ触れなければならないが、楽しくなければ続かない。したがってできるだけ楽しくできるよう教材を選んだり、毎日負担なく勉強できる時間帯を見つけたりするべきである。私の場合は毎朝アメリカのドラマ+英会話各25分ずつを習慣としている*1。朝が自分にとって一番快適であり、ドラマや英会話も面白い教材を選ぶ事で楽しくやれている。ただドラマも英会話の教材も、面白いものを選ぼうと思っても初学者には難しすぎる場合が多い。そのため初学者のうちは「自分に合ったレベルの教材を使う事」(つまり全然内容が分からない/聴き取れないというものは選ばない事)を優先した方が良いと思う。英語学習者向けの教材(主にTOEFL/IELTSの参考書)は面白くないものが多いので最初はつらいが、TOEFL 100/IELTS 7.0を超えれば、ネイティブ向けの面白い教材にも手を出せるようになる。ここまで来ればしめたもので、「楽しくやる事で継続する」という点だけを意識すればいいだろう。
私のケース
私のスコアは
・GPA :京都大学(学部)…4.12/4.3、シカゴ大学(修士)…3.85/4.0
・GRE:Verbal 158、Quantitative 169、Writing 4.0
である。GPAについては上記の目標をクリアしているが、GREとTOEFLは目標を下回ってしまった。特にTOEFLについては修士課程受験の時に108点を取得し、そこから修士課程を通じて英語力の向上も感じていたので悔しい結果だった。
GRE対策については、Manhattan Prepのフラッシュカード(Essential+Advanced)を使ってGRE用の単語を覚えた後、問題演習をした。Quantitativeは公式問題集のみ、Verbalはそれに加えてManhattan Prepの5 lb. Book of TOEFL Practice Problemsを使った。Writingは公式の採点サービスScoreItNow!を使って練習した。Magoosh等を使ってより時間やお金をかけて取り組む事も可能だが、対策を通じて自分の能力が向上しているという感覚がなかったため、コスパ重視の対策となった。
自分のようにTOEFLのスピーキング・ライティングで苦戦する人は、IELTSを受けた方がよいかもしれない。実際、3年前の修士課程受験時に受けたIELTSでは、スピーキングで7.0、ライティングで7.5(TOEFLに換算するとそれぞれ25、26ほど)と昨年のTOEFLよりも良い結果が出た。特にTOEFLライティングは①短い時間で多くの語数を書かなければ高得点が取れない、②ミスを減らすために見直しの時間をたっぷりとらねばならない、という2点においてタイピングスピードが肝となるため、タイピングが遅い人は制限時間に余裕があるIELTSの方が高得点をとれる可能性が高い。なお、IELTSを受ける場合はコンピューターテストをおすすめする。というのも、ペーパーテストの会場のスピーカーで行うリスニングは音質が悪く、難易度が急上昇するからである。
*1:渡米後追記:渡米後についてはEconomistの記事を用いた英会話のみが毎朝の習慣となっている。「ネイティブ同士のような日常会話を楽しむ」というのが目標なら、ドラマに出てくるような口語表現を覚えたりドラマの凄まじいスピードでリスニング練習をしたりする事も有意義だと思うが、自分の場合は「頭の良いネイティブと対等に議論をする」事が目標なので、ドラマは語彙やスピードの面でオーバーワークであり、中身の濃い記事に関してネイティブと議論する練習を積むのが自分にとって必要十分な英語学習だと考えるに至ったからである。